「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を見たネタバレなし感想
『レザボア・ドッグス』で鮮烈なデビューを飾ったクエンティン・タランティーノ監督第9回監督作品。
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットという2大スターの共演ばかりが話題になっていましたが、本作こそタランティーノ監督の映画愛が伝わる作品でした。
60年代ハリウッドを舞台にしたのもあり、ベトナム戦争に対する若者の反骨心やニューシネマの流行といった細かい演出が冴え渡っていたと思います。
特に若者の反骨心に関しては、劇中で登場するヒッピーの姿からも顕著にみられます。
マンソンファミリーの一員である女性の妙にセクシーな衣装であったり、本来処理すべき体毛を処理していなかったり、自由を謳う当時の若者を再現していると思いました。
当時のハリウッド映画やスターの登場も多く、当時を生きていた人々をタイムスリップさせる程の没入感がこの作品にはあるように思えました。
スティーヴ・マックィーン、ブルース・リーといったスターのそっくりさんの出演も笑えますが、『大脱走』の1シーンにそのままディカプリオが登場する演出は、オリジナルの世界観を守りつつ違和感がないほどマッチしているので面白かったです。
最後にタランティーノの映画愛についてですが、極めつけはエンディングの展開だと思います。
タランティーノなりの故人の救済と映画の救済。
過去作の『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』で見せた過去改変ではありますが、その2作と大きく異なるのが主要キャラが全員生存したことです。
タランティーノは60年代のハリウッド転換期をシャロン・テート殺人事件に位置付けました。
あの痛ましい事件の前後で映画界は大きく変わったと実際言及しています。
その残忍な事件への怒り、ハリウッドの希望を崩壊させた者たちへの復讐が本作のラスト20分だと思います。
マンソンファミリーへの怒りと復讐心によってもたらされる、映画人の救済は監督の過去作からは想像もつかない程優しく、また現実の事件への追悼の意味合いが込められてるようでした。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」作品情報
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」キャスト
監督・脚本 | クエンティン・タランティーノ |
製作 | デヴィッド・ハイマン シャノン・マッキントッシュ クエンティン・タランティーノ |
公開 | 2019年8月30日 |
上映時間 | 161分 |
登場人物 | キャスト | 吹替え版声優 |
リック・ダルトン | レオナルド・ディカプリオ | 加瀬康之 |
クリフ・ブース | ブラッド・ピット | 堀内賢雄 |
シャロン・テート | マーゴット・ロビー | 種市桃子 |
ロマン・ポランスキー | ラファル・ザビエルチャ | |
マーヴィン・シュワーズ | アル・パチーノ | 山路和弘 |
ジェームズ・ステイシー | ティモシー・オリファント | |
トルーディ・フレイザー | ジュリア・バターズ | |
ウェイン・マウンダー | ルーク・ペリー | |
サム・ワナメイカー | ニコラス・ハモンド |